非友好国の非居住者とその支配会社との取引への対抗措置法の適用について、最高裁が体系的見解を公表
B1 Tax & Legal Messengers
全般的なアプローチ
2026年6月17日、ロシア連邦最高裁判所幹部会は、「ロシアの国益を保護するための特別経済措置法の仲裁裁判所による適用」と題するテーマ別レビューを採択した。これは、対抗措置法の適用をめぐる紛争において、仲裁裁判所が従うべき初の体系的指針となる。
最高裁は、対抗措置法の適用に関して保守的なアプローチを支持。裁判所は、取引や決済が形式的に定められた要件を満たしているかどうかだけでなく、その経済的目的、最終的な受益者、当事者の行動の整合性、そして特別経済措置の回避の兆候の有無についても評価しなければならない。
裁判所は、大統領令および関連する下位法令の要件に違反する行為を、国の金融安定性や経済安全保障に係る公共利益を損なうものと位置づけている。かかる違反があった場合、取引自体やその履行に伴う一部の行為(決済を含む)は、履行時点までさかのぼって無効とされる可能性がある(民法第168条)。その場合、当事者はお互いに受領した全額を返還する義務を負うことになる。
また、一定の要件のもとで故意が認められるなど、民法第169条に定める条件が満たされる場合には、取得した資産や収益がロシア連邦の国庫に帰属することもある。
さらに、裁判所は、当事者が主張していない場合や、手続き上で当該論点が特に挙げられていない場合であっても、対抗措置の要件への適合性について自ら判断することができる。
制裁迂回行為への厳格な対応
最高裁は、無効とされるリスクが及ぶのは、確立された手続きに直接違反する取引や決済だけではないと明確に指摘。対抗措置の制限を迂回することを目的とした行為についても、その対象となり得る。具体的には、以下のようなスキームがこれに該当し得ると考えられる。
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一時的な決済手続きの違反
非友好国の債権者に対する決済であって、大統領令第95号に違反し(「C」口座を利用せずに)行われたものは、ロシアの金融安定性を確保するという公共利益に反するものとして無効とみなされる。
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人為的な支払いの分割
大統領令第95号を迂回して決済を適法に見せかけるため、月間1,000万ルーブル(または外貨相当額)を超えない金額で一連の取引を連続して実行する行為は、違法な目的をもった法回避行為として認定される可能性がある。
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債権譲渡
非友好国の債権者が、ロシア居住者(債務者)に対する債権を、ロシア人または友好国の居住者に譲渡する行為。当該譲渡の唯一の目的が「С」口座または「О」口座を迂回して資金を取得することである場合、裁判所は当該取引を無効とする。なお、大統領令の適用が当初から及ばない債務(例:物品供給契約に基づくもの)については、善意の債権譲渡も可能である。
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回収型債権譲渡の利用
非友好国の人(外国人)が資金回収を目的に、ロシア人に債権を譲渡し、その後、回収した資金をそのロシア人が外国人に送金するといった、資金回収を目的とした債権の譲渡。
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ロシア事業体が関与する取引
非友好国の人の支配下にある居住者間で行われる不動産取引は、事前承認が必要となる場合があり、必要な承認がない場合は無効となる。このリスクは、決済がロシア国内で完結し資金が国外に送金されない場合でも存在する。裁判所は、その後の資金移動だけでなく、特別許可手続きの違反そのものを決定的な要素として考慮する可能性がある。
たとえ選択された取引スキームが形式上、民法の一般的要件を満たしているように見える場合であっても、実際の目的が対抗措置の適用を回避することにあったと認められる場合には、当該取引が争われる可能性があることに留意が必要である。
特別履行手続きが適用されないケース
対抗措置法では、ブロッキングメカニズム(「С」口座・「О」口座)を用いずに決済・取引を行える条件および例外が定められている。最高裁は以下の主要ポイントを挙げている。
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義務の種類および支払額の制限(大統領令第95号)
「С」口座を通じた一時的決済手続きは、融資・貸付・金融商品に係る義務にのみ適用される。債務がその他の法的関係(物品供給契約など)から生じた場合、大統領令第95号の制限は適用されない。また、外国人債権者に対する義務の総額が暦月あたり1,000万ルーブル(または外貨相当額)を超えない場合も、「C」口座の規制は適用されない。
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知的財産権者のロシアにおける活動の継続(第322号大統領令)
「O」口座による特別決済手続きは、ロシアの取引先との契約上の義務を適切に履行し、ロシア領内で事業を実際に継続している非友好国の権利者には適用されない。
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契約外の請求への例外規定の拡張
大統領令第322号が定める例外(ロシアで事業を継続する企業向け)は、知的財産権に関連する全ての金銭的債務に対して適用され、その発生根拠は問われない。
これは、契約上のロイヤルティに限らず、知的財産権侵害に基づく損害賠償(不法行為)やその他の金融制裁の回収についても同様。権利者が「事業継続」基準を満たす場合、「O」口座を介さずに賠償金や罰金を回収できる。
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不公平な慣行に対抗する手段としての強制的ライセンス
非友好の権利者が物品の供給を停止したり、価格を不当に引き上げる場合(これにより国民の生命・健康が脅かされる場合)、ロシア人は強制的にライセンスを請求する権利を有する(民法第1362条)。
裁判所が、外国の権利者が以下のいずれかに該当すると判断した場合、ライセンス契約の条件を変更し、またはその有効期間を延長することができる。
- 入札への参加を組織的に回避していること
- ロシア市場の需要を満たす供給能力を有していないこと
- 社会的に重要な製品の不足を意図的に生じさせていること
かかる場合、強制的ライセンスは、非友好国の人の知的財産権濫用を克服するための例外的措置と位置付けられる。
対抗措置法の要件を順守しない場合には、取引またはその履行行為の無効認定、受領物の返還、裁判所は保護を拒否すること、さらに法律で定められた場合における資産のロシア連邦への移転など重大な法的リスクが伴う。
手続上の論点―裁判所・検察庁の役割
最高裁は、特別経済措置の遵守を監視するための手続き上のメカニズムも確認した。具体的には、裁判所は当事者からの申立てがなくても、取引が対抗措置の迂回を目的とする可能性がある場合には、自発的にその取引の無効を認定することができる。
本レビューにおける主要な手続き上のポイント
- 裁判所は、取引、債権譲渡、和解合意、その他の仕組みの履行が特別経済措置の迂回につながるおそれがある場合、自発的に無効性を審査できる。
- 対抗措置を回避するために司法手続きが利用されている兆候がある場合、検察官は公共利益を保護するために仲裁手続きに介入することができる。
- 特別経済措置への違反は、新たに発見された事情として、判決の再審を実施する事由となり得る。
- 裁判所は、訴訟中に資金回収を容易にする目的で外国も原告をロシア側の後継者に差し替えようとする試みを、無効な債権譲渡と評価し、当事者変更を却下できる。
- 裁判所は、和解合意の条件が特別履行手続きの迂回を実質的に目的とする場合(例:代理人・譲受人・中間人への金銭支払いを通じた迂回)、当該合意を承認しない。
- 外国の仲裁裁判所の判断の承認・執行にあたり、裁判所はその執行がロシアの公序良俗および現行の特別経済措置に反するか否かを評価しなければならない。
仲裁合意条項に関する最高裁の見解
仲裁合意条項の存在自体が、ロシア仲裁裁判所の管轄を排除しないことを確認している。特に、紛争が制裁制限に関連する場合、または一方当事者が司法へのアクセスにおいて障害に直面している場合が該当する。かかる場合には、ロシアの仲裁手続法第248.1条および第248.2条に定められた、外国の制限措置の対象となっているロシア人を保護するための特別規則が適用される。
具体的には:
- 外国の裁判所または仲裁における手続きの開始・継続の禁止を求める申立ては、当事者間に仲裁合意があるという理由だけで審理対象外とされることはない。
- 外国による制限措置の発動に起因して紛争が生じた場合、ロシアの裁判所は当事者が合意した外国仲裁の有無にかかわらず、自らの管轄権を認めることができる。
- 司法へのアクセスにおける障害は、外国での手続き遂行が絶対的に不可能な場合に限らず、金銭的・時間的・組織的・または 風評に伴うコストが著しく増大する場合にも認められる。
- 裁判所は、外国要素を含む紛争を審理する際、法的関係がロシア連邦の領域と密接な関連を有するか否かを考慮することができる。これには、義務の履行地、証拠の所在場所、および当該紛争とロシア市場との実質的な関連性が含まれる。
- ロシアの裁判所は、当事者に対し、外国における訴訟手続きの開始または継続を禁止することができ、また、当該禁止命令に違反した場合には罰則を科すことができる。
このように、企業にとっての手続き上のリスクは著しく増大する。当事者は、裁判所が主張された請求や契約条項の形式的な評価のみに留まると期待することはできない。外国の要素が存在する場合、裁判所は、公序、係争中のスキームの実質的目的、制裁制限の影響、および特別経済措置を迂回するリスクを考慮することになりなる。
企業にとって個別に重要なポイント
本レビューには、企業にとっても重要な追加項目がいくつか含まれている。
(1)強制的ライセンスは例外的かつやむを得ない措置であり、権利者の行動がロシア市場における製品不足を招き、必要な商品への公正なアクセスを妨げる場合に、特許権の不十分な利用を防止するために適用される。特に、国民の生命・健康保護に影響を与える商品に関連する事情は、特に重視される可能性がある。
(2)戦略的企業との取引に対する監視が強化されること。裁判所は、取引の形式的パラメータだけでなく、外国投資家が戦略的企業の活動に影響を与える可能性(間接的支配や経営機関の決議を阻止する能力を含む)を事実上取得したか否かも評価する。
(3)特別経済措置の迂回の試みが、取引の無効にとどまらず、より深刻な結果を招く可能性がある。これには、原状回復義務、選択したスキームに対する司法保護の否認、手続承継の不能、和解合意の不承認、または仲裁判断の執行拒否などが含まれる。
(4)外国の制裁・制限措置が、一定の場合には債務履行を客観的に妨げる事情として考慮され得ることを最高裁が認めていること。
(5)専門的な金融市場参加者の責任について言及しており、外国発行体の有価証券に関する顧客の指図が制裁制限により履行できなかった場合、ブローカーが当該不履行について責任を免れ得ると指摘した。ただし、ブローカーは誠実に行動し、指図の履行のために合理的な措置を講じたが、他の方法で履行する客観的可能性がなかったことを立証する必要がある。
弊社B1のサービス
本レビーを踏まえ、弊社では以下のサービスをご提供可能です。
- 取引への対抗措置制限の適用可否について、所有・支配構造(非友好国の人の間接関与を含む)を分析すること。
- 取引に係る政府委員会の事前承認または許可の要否を評価すること。
- 政府委員会の許可取得に向けた申請書および添付書類の作成・提出を支援すること。
- 制限を踏まえ、対象義務が特別な執行手続・決済要件(特別口座の利用を含む)の対象となるかを評価すること。
- 取引スキームに制限迂回の兆候がないか分析すること。
何かご不明な点や具体的な案件についてのご相談がございましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。
留意点
本アラートでは、各トピックにおける概要を一般情報としてまとめたものです。 クライアントのロシア取引に際してのアドバイスではありませんので、本アラートの情報をもとに行われた取引については、B1では責任を負いません。各取引を行うにあたっては、専門家のアドバイスを別途受けてから行うことをお薦めします。 英文と露文アラートは、2026年7月1日時点に執筆しております。なお、今後の情勢次第で、上記内容の変更・更新が行われる可能性がありますので、最新情報を常に把握することが重要です。