法令変更によるVATの追加納付額を買手に
請求することに関する憲法裁判所の判決
(VTB銀行とシトロニクス社の紛争)
B1 Tax & Legal Messengers
クライアントの皆様
お世話になります。ロシアの付加価値税(VAT)について、契約締結後の税法改正により税負担が増加した場合、その増税分を売手が買手に請求できるかが争われたVTB銀行とシトロニクスIT社の紛争に関し、ロシア連邦憲法裁判所は2025年11月25日、重要な判決を下しました。
憲法裁判所は、税制変更が想定されていない固定価格の継続的契約においてVATに関する法改正が行われた場合の価格調整について、現行法には明確な仕組みがなく、法制上の不備があると指摘しました。その上で、売手がVAT増額分を自動的に買手へ転嫁することは憲法に反すると判断しつつ、紛争解決のための暫定的な救済措置として、一定の条件を満たす場合には、裁判所を通じて、売手が買手にVAT増税額の50%を上限に請求することを認めました。
この判決は、2026年1月1日から予定されているVATの税率の引上げ(20%→22%)に伴い、2%の増税負担に関する紛争にも適用される可能性がありますので、以下でその詳細をご案内します。
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2025年11月25日、ロシア連邦憲法裁判所は、VTB銀行とシトロニクスIT社の紛争について判決第41-P号を公表しました。
本判決は、VAT税率変更があった場合に、価格改定を想定していない固定価格の継続契約をどのように処理すべきかという論点を示しています。
この判断は当事者間に限定されるものではなく、2026年1月1日予定のVAT税率変更に伴い、同様の問題が発生した場合に参照される可能性があります。
憲法裁判所は、本判決において、特に次の点を指摘しました。
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法令上のルールが未整備
民法・税法のいずれにも、税率変更によりVAT負担が増加した場合の、固定価格・継続契約の調整方法が明確に定められておらず、法制度上の欠陥があると指摘しました。
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VAT増加分の自動転嫁は不可
売手がVAT増額分を自動的かつ無条件に買主へ追加請求できると解することは、ロシア憲法に反すると判断されたこと。特に、買主がVAT控除を受けられない場合には、税負担が一方的に買主に転嫁されることとなり、公正性、比例性、法への信頼および契約当事者間の利益衡量の原則に反するとされました。
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暫定的な価格調整の枠組み
立法対応が行われるまでの暫定的な紛争解決手続として、売手は一定条件の下で、裁判所を通じ、追加で発生したVAT額の最大50%を上限に価格引上げを請求可能とされました。
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価格引上げが認められる要件(すべて必要)
- 税率変更により、売手に実際の財務的損失が生じている
- 買主が契約条件の変更に応じていない
- 買主がVAT控除を受ける権利を有していない
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取引形態ごとの注意点
- 一般消費者(個人事業主でない個人)との契約
価格変更を認めない特別な消費者保護が設けられています - 政府調達契約
一般ルールではなく、政府調達に関する特別法の規定に基づき判断されます。
- 一般消費者(個人事業主でない個人)との契約
一方で、本判決後も、以下の点については未解決の論点として残されています。
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継続的にサービスが提供されているものの、報酬が期間ごとに区分されていない契約に対し、本判決がどのように適用されるのか。
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VATの適用に伴う価格変更について、当事者間の合意があったと認められるためには、どのような契約文言が必要とされるのか。
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買主がVAT控除を受ける権利を有する場合にも、当該暫定的手続が適用されるのか。
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VAT税率が引き上げられた場合に、本判決がどのように適用されるのか。
またより詳しくは、露文ニュースをご参照ください。
B1によるご支援内容
- 既存の継続的契約について、VAT関連条項の有無や不備を確認し、Solution B1 – AI Agentを活用して潜在的な税務・契約リスクを評価します。
- VAT税率変更を踏まえた契約条項の見直しや、取引先との契約変更交渉を支援します。
- 契約雛形を分析し、VAT対応の観点から必要な修正・明確化を行います。
- VAT税率変更が各契約に与える影響や、当該契約が継続的契約に該当するかについての判断方針を策定します。
- 解釈が不明確な点については、税務署への照会を支援します。
- 契約承認プロセスを見直し、標準契約からの逸脱を防止・制限する仕組みの構築を支援します。
B1ジャパンデスクの日本語のウェブサイト:https://b1.ru/en/japan-desk-jp/
留意点
本アラートでは、各トピックにおける概要を一般情報としてまとめたものです。 クライアントのロシア取引に際してのアドバイスではありませんので、本アラートの情報をもとに行われた取引については、B1では責任を負いません。各取引を行うにあたっては、専門家のアドバイスを別途受けてから行うことをお薦めします。 英文と露文アラートは、2025年12月15日時点に執筆しております。なお、今後の情勢次第で、上記内容の変更・更新が行われる可能性がありますので、最新情報を常に把握することが重要です。